yandyandy’s diary

心臓リハビリテーション指導士から、心臓を持つすべての人へ

心臓突然死を考える

人には必ず死が訪れますが、それがいつなのかは誰にも分かりません。今日かもしれない、明日かもしれない。そんな不安に怯えながら生きていくのは、とても苦しいことです。でも、そんな不安も抱かぬまま亡くなってしまう人もいます。

それが『突然死』です。

 

突然死とは

WHO(世界保健機関)では、「発症から24時間以内の予期せぬ内因性(病)死」 と定義しています。突然死の多くは心臓突然死です。しかし、我が国では剖検例が少なく、突然死の60 ~ 70%が状況証拠から心臓突然死と推測されているだけで、すべての症例が心臓突然死と確認されている訳ではありません。心臓突然死で多く見られる心室細動などの致死性不整脈は死後には心電図で確認できませんし、虚血性心疾患である心筋梗塞が原因だとしても、虚血後5〜6時間経過しないと梗塞巣は確認できません。短時間(多くは1分以内)に発症し死亡に至る心臓突然死では、病理解剖を行わないと原因究明が難しいのでしょう。

 

心臓突然死の実態

日本では毎日多くの人が心臓突然死で命を失っています。その数は、1年間で約7.9万人。一日に約200人、7分に1人が心臓突然死で亡くなっている計算になります。その多くは心室細動と呼ばれる致死性不整脈です。AEDの普及により救命率の上昇が期待されますが、AEDの実施率はたったの4.2%。まだまだ普及活動が必要です。この致死性不整脈の場合、基礎疾患のない若年者の方が救命率は上がります。そして、この若年者の突然死の多くは学校生活で起こります。

 

学校での突然死

日本スポーツ振興センターの統計資料によると、学校管理下の突然死の実数は、1980年頃は小中高生共に年間40名程度、1990年代には小中高生共に年間20〜30名程度まで低下しました。その背景には、学校心臓検診により突然死の可能性のある疾患が発見されやすくなった事、学校での心疾患児の管理が適切になった事、先天性心疾患の術前術後管理が改善された事があるといいます。そんな中でも年齢とともに突然死は増加する傾向にあり、明らかに男子の方が多いと言います。運動との関連で見ると、やはり体育の授業や運動部部活動中で多く70%を占めています。しかし、登下校時の突然死も多く、特に先天性心疾患を持つ児童にとっては登下校もかなりの運動負担になっていると思われます。

以外は、学校管理下突然死の原因疾患を分類した表です。以前は、先天性心疾患術後と心筋症が多かったようですが、段々と後天性心疾患と心筋症の比率が増えてきています。そして、半数近くは原因不明というのが現状です。

https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/kenko/jyouhou/pdf/totsuzenshi/22/totsuzenshi22_2.pdf

また、1988〜1993年に日本体育学校健康センター に報告された学校管理下の心臓性突然死536例中、生前に心疾患が指摘されていたのは209例。つまり、残りの327例は心疾患は指摘されていなかったという事になります。他にも神奈川県の児童・生徒の突然死例97例中90例は生前心疾患を指摘されていませんでした。つまり生前に心臓に器質的疾患を持っていなくても、不整脈が指摘されていなくても、誰にでも起こりうるのが心臓突然死なのです。

 

心臓突然死の予防

そんな予測不能な心臓突然死を防ぐ事は出来るのでしょうか。論文、文献、ネット記事、様々な情報を見ていても安心できる予防策は見つかりませんでした。心筋梗塞などの虚血性心疾患由来の突然死であれば、日頃から食生活、運動、ストレスに気を付ける動脈硬化予防が突然死予防に繋がります。不整脈については健康診断で、致死性不整脈に繋がる不整脈がないか定期的に確認する、自身で脈を測る習慣をつけ脈の乱れに早期に気付けるようにする事。就寝中の突然死が一番難しいと思いますが、血液の流れが滞らないように水を1杯飲む、部屋の温度が一定となるように寒暖差に気を付ける事でしょうか。このように、予防はとても難しい問題です。では、なにが大切か。不整脈や虚血性心疾患によって心停止しても、蘇生できればいいんです。それしかないんです。

 

心臓突然死の救世主、AED

先ほど、普及率の低さを言及しましたAED。これが、私達を心臓突然死から救ってくれる救世主なのです。心臓マッサージだけでは救えなかった命が、AEDが民間人でも使えるようになった今、救う事が出来るようになりました。学校や職場、スポーツ現場では救命率が高くなっています。ただし、自宅、学校、職場、道端、どこかで心停止を起こした時に周りに誰かがいるか、それが重要になります。

 

倒れている人を発見したら、

①声をかけて意識を確認しましょう。(揺らしたりしてはダメ)

②周囲に人がいれば集めて119番に連絡してもらい、AEDを探してきてもらいましょう。→参考:財団全国AEDマップ (qqzaidanmap.jp)

③胸骨圧迫(心臓マッサージ)をひたすら頑張ります。肋骨折れても気にせずしっかり押し込みましょう。

※周囲に誰もいない場合は、119番をして救急隊の指示を仰ぎましょう。スピーカー通話にして、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)開始がベストです!

AED到着次第、すぐに使用する。

AEDは除細動(電気ショック)が必要かどうか解析してくれるので、迷わず使ってください。胸骨圧迫(心臓マッサージ)も心停止を確認しなくても始めて大丈夫です。迷っているその一瞬が心臓突然死に近づけています。

 

まとめ

心臓突然死は、自分にも起こるかもしれません。先天性心疾患、成人先天性心疾患の方々はより高いリスクに晒されています。ですが、予測できない死を恐れて生きるのはその人のQOLを下げてしまいます。周りに誰かいれば大丈夫、まずはそう思えるように社会全体で防げる心臓突然死を防いでいきましょう。動画とか写真とか撮ってる暇あったら心臓マッサージやるの代わってくださいね。かなり疲れるので、一人では続けられません。