yandyandy’s diary

心臓リハビリテーション指導士から、心臓を持つすべての人へ

第二の心臓、ふくらはぎを考える

第二の心臓と言われるふくらはぎ。

「血液の循環をよくするため、ふくらはぎを鍛えましょう!」というキャッチフレーズを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

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ふくらはぎを鍛えることで得られる効果は、循環改善だけではありません。

今回は、ふくらはぎが循環だけでなく歩き方に与える影響を、理学療法士の目線で考えます。

 

ふくらはぎの筋肉

ふくらはぎには、大きく長い筋肉がいくつかあります。

代表的なものは以下の2つ

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腓腹筋:内側頭と外側頭があります。

    浅層筋と呼ばれ、表面に近いところにあります。    

【起始】大腿骨内側顆と外側顆

【停止】踵部(ヒラメ筋と合わさって)

【作用】膝の屈曲、足の底屈

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ヒラメ筋:深層筋と呼ばれ、腓腹筋よりも内側にあります。

【起始】腓骨頭

【停止】踵部(腓腹筋と合わさって)

【作用】足の底屈

 

第二の心臓と言われる理由

心臓の役割は、肺で酸素を受け取った血液を全身に送り、酸素を使い果たした血液を再度肺に送り、血液を循環させることです。

この循環の一角を担うのが、ふくらはぎです。

 

酸素を豊富に含んだ血液を全身に運ぶのは動脈。

酸素を使い果たした血液を心臓に戻すのは静脈。

 

動脈の流れは心臓から足に向かうのに対し、静脈の流れは足から心臓に向かいます。

その為、重力に抗して血液を送り出すシステムが必要になります。

そのシステムは4つあります。

 

1) 胸腔内圧の変化(呼吸)による引き込み

2) 動脈の血流による押し出し

3) 筋ポンプ作用

4) 静脈弁

 

このうち、3) 筋ポンプ作用を担うのがふくらはぎです。

静脈の周りにあるふくらはぎの筋肉(主に腓腹筋とヒラメ筋)が伸び縮みすることで、静脈内の血液を送り出します。

 

このとき、4) 静脈弁があるため、押し出された血液は逆流することなく心臓方向に向かうことができます。

こうして、足に流れてきた血液は心臓に戻され循環が維持されます。

 

ふくらはぎの筋力が弱くなると、この筋ポンプ作用が弱まり血液の流れが滞ります。

すると、むくみが起きたり、全身に十分な血液を送り出せなくなったりします。

 

このように、ふくらはぎは心臓と共に全身の血液循環を担う存在なので『第二の心臓』と呼ばれているのです。

 

歩行への影響

ふくらはぎの筋力が低下すると、歩行にどんな影響があるのでしょうか。

 

歩行でのふくらはぎの働き

『歩く』という動作は何相かに分けて考えることができます。

詳細は省きますが、ふくらはぎが1番影響するのは足を後ろに蹴り出す部分です。

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この蹴り出しが弱いと、歩幅が狭くなり歩く速度が遅くなります。

歩幅が狭くなると、同じ距離を歩くためには歩数を増やさなくてはいけません。

つまり、人より多く足を動かさないといけなくなります。疲れますね。

 

人間の歩行は移動手段なので、本来は効率的で疲れにくいものです。

しかし、様々な要因から非効率的な歩行となり疲れやすくなります。

 

心疾患を持つ人は、骨格筋に多くの血液を使ってしまうとその他の臓器への血液供給が減ってしまいます。

そのため、より効率的に動くことが必要なのです。

 

ゆっくり正しく歩く

心疾患がある人は、心臓に負担がかからないようにゆっくり自分のペースで歩くことが大切です。

しかし、ゆっくり歩くとふくらはぎの筋肉をあまり使いません。

筋肉は使わなければ衰えます。

衰えた筋肉を鍛えるのは、とても大変です。

 

そこで、ゆっくり正しい姿勢で歩きましょう。

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これがよく言われるウォーキングの正しい姿勢です。

普段歩くときは、手は自然に下ろしますが基本的にはこの姿勢を意識しましょう。

 

慣れないうちは、全てを意識すると逆にぎこちなく疲れてしまうかもしれません。

 

ここでのポイントは、2つ。

 

お尻 です。

 

お尻にキュッと力が入る感じがあれば、足は後ろに伸びています。

足が後ろに伸びれば、あとは勝手に蹴って前に戻ってきます。

 

実は、「足が後ろに伸びたら足を蹴って前に出す」という動作は人間の中にプログラミングされている動きなのです。

なので、へたに「蹴ろう!」とすると逆に動きがおかしくなるのです。

 

次に、踵からつくことを意識します。

つま先を上げるとふくらはぎの筋肉が伸ばされ、収縮しやすく蹴り出しやすくなります。

 

皆さん、普段どうやって歩いていますか?

自分の歩き方を振り返るいい機会になればと思います。

 

いつもの距離を歩いてみて、歩き方の違いをどう感じるか是非試してみてください。

 

ふくらはぎの鍛え方

正しい歩き方は、ふくらはぎを使います。

ですが、先程もお話したように歩行は効率的な移動手段であって筋トレではありません。

では、ふくらはぎを鍛えるにはどうしたらよいのでしょうか。

 

『踵あげ』

 

これにつきます。

 

立ってやれば、腓腹筋

座ってやれば、ヒラメ筋。

筋トレの定番です。

 

注意点はこちらです。

   

 

座って行う場合も、注意点は同じです。

 

まず30回!

やってみましょう!!

 

ふくらはぎの筋力は、心疾患患者の運動耐容能と相関があると言われています。

特に、ヒラメ筋の厚さが重要です。

心疾患を持つ人には、ヒラメ筋が鍛えられる座って踵上げをおすすめします!

 

まとめ

今回は、循環も含めてふくらはぎに注目しましたが、効率的に長く歩けるためには筋肉をバランスよく使うことが大切です。

心臓に負担が少ない歩き方、考えていきましょう。