yandyandy’s diary

心臓リハビリテーション指導士から、心臓を持つすべての人へ

先天性心疾患を持つ人の就労

前回挙げた論文を読んでみました。

 

yandyandy.hatenablog.com

 

成人先天性心疾患の方の社会的自立に対する研究。

社会的自立、主には就労の部分を見ていきます。

 

まず2002年の論文から。

成人先天性心疾患を持つ当事者へのアンケート調査を実施。こちらでは、就労状況を聞き取りしているので働いてる人を前提としているようです。

 

この論文の中で気になった部分がこちら。

 

「中等症以上の患者の場合,就職を拒否される率は一般人と比べて 400 倍高いとされ,病態の重症度は非雇用率,低賃金と相関するとの報告がある.」

 

400倍⁉︎

 

中等症以上とはどのレベルなのか。

上の報告の後に「UCLA心機能分類Ⅲ度以上の人(6%)が通院で満足に勤務できない」と続けている事から、恐らくⅢ度以上が中等症以上なのでしょう。

(このUCLA心機能分類が調べても分かりませんでしたが、NYHA分類と同義ですかね。)

 

そして最後には、

「実際は約 3/4 以上の場合 で,就業時に心臓病があることは就職にまったく関係なかった.一般的に先天性心疾患患者は自己を低く評価する傾向が強いとされており、この結果も同様な心理的影響を推測させる.」

 

ん?

 

心疾患あるから自分はダメなんて思わないで

心疾患があっても就職には関係ないよー

他の人より400倍内定取りにくいけどねー

 

拭いきれない違和感があるのは私だけでしょうか。

ちなみにこの調査に参加している人は、94%が上記のUCLA心機能分類Ⅰ~Ⅱ度と比較的心機能が良好な方が大半。

なんだかすっきりせず、次の論文を読みました。

 

2020年の論文は、雇用する側、企業へのアンケート調査。

当事者の大変さはSNSなどで比較的目にする機会がありますが、障害者を雇用する企業側の話はあまり情報として入ってこないのでとても興味深い内容でした。

 

まず「先天性心疾患」については、名前は聞いたことがある程度の理解が過半数

そして対象とした企業のうち、先天性心疾患患者を雇用可能と考える企業は3割程度。

その中で、企業としては「どのような配慮が必要か」「適切な仕事があるか」分からないとの事。

 

知らないから分からない。

当然と言えば当然ですよね。

 

この結論に辿り着いたとき、私がやりたい事は間違ってないと確信しました。

心臓のこと、心臓病のことをもっと広く知ってもらえばいいんです!

企業や転職サイトなどの就労に関する場所だけでなく、個人単位でも理解が深まればきっと社会が変わっていきます。

高血圧症や糖尿病のように、なんとなくでもみんなが知っている。

心臓病がそんな存在になるように、少しでも頑張ろうと気合が入りました。

 

18年の違いというより、着眼点が違う2つの論文でした。

雇用する側にも知識は必要ですが、当事者にも知識が必要だと思います。自分の心臓の事だから色々調べて勉強してる方もたくさんいると思います。ですが、自分の身体って進んで知ろうとしないと分からないものです。それは病気の有無に関わらず。

だから、先天性心疾患を持つ人には小さな頃から自分の身体に興味を持って自分で自分の身体を管理出来るように、そして心疾患を知らない人にもしっかり説明できるようにしておく必要があるんじゃないかと考えます。

 

以上、論文を読んだ感想でした。