yandyandy’s diary

心臓リハビリテーション指導士から、心臓を持つすべての人へ

親主体の移行期準備。その時、子どもは?

先天性心疾患の移行期は12~20歳と言われます。

その間に、小児循環器科から成人循環器科への転科準備を行います。

未成年であることもあり、その転科準備は親が主体となります。

しかし、生涯を通して医療と関わっていくのは当事者である子どもです。

移行期の中で子どもはどのような立場にあるのでしょうか。

以下の研究報告から現状を把握していきます。

www.jstage.jst.go.jp

転科の準備は?

成人循環器科への転科について、親は医師からの説明や自身での情報収集の中で必要性を知る機会が多いと思います。

しかし、具体的にどうしたらいいのかまで理解し、行動している人は少ないようです。

研究報告の中で、転科について親は「検討しているが準備はしていない」という回答が32名中13名と一番多くなっています。

 

それに対し、子どもは35名中19名と半数以上が「よくわからない」と答えています。

親以上に子どもは情報がなく、考えることすらできていません。

 

移行に対する認識では、子どもは「医師が変わることへの不安」を多く訴えています。

産まれた時から、自分と共に病気に向き合ってくれている医師は子どもにとって特別な存在です。

この不安は、医師がいなくなったら自分がどうなってしまうのか、この先生しか自分を分かってくれないのではないか、という医師への依存も見えてきます。

医師への信頼はとても大切ですが、それが依存や執着になると円滑な移行を阻害します。

「よくわからない」ことは、人を不安にさせます。

不安があると、人は安定を求め現状に執着します。

子どもは移行について、医師との関係性の変化が「よくわからない」ため不安になっています。

その解決には、小児科医師と移行先の医師が連携をとり子どもに説明しながら受け入れてもらうことが必要です。

周りが思っている以上に、子どもはよく分かっていないのです。

 

自分の病気は知ってる?

実は、子どもは自分の病気についてもよく分かっていないようです。

病気の認知に関する質問に対し、診断名は35名中33名と実に95%近くが理解していました。

しかし、そのうち18名は「心臓が悪い」「うまれつき穴がある」などの漠然とした内容でした。

さらに具体的な病気の内容を知らない子どもが7名いました。

ここで問題となるのは、説明する時期です。

親が初めて子どもに病気について告知した時期は「幼児期」が最も多く

その後、改めて病気について説明したのは「学童前期」が多いようです。

子どもは幼児期に、「心臓が悪い」ことを知り

小学校くらいで「心臓に穴がある」など自分がどういう病気なのかを教わります。

そして、15歳以上になった子どもたちもその頃の記憶、知識のままなのです。

 

子どもは自分で情報を得ることがなかなか出来ません。

親や医師からの継続的な情報提供が必要なのです。

中学生になれば理解力は上がり、自身の身体の変化も感じます。

女性であれば、月経が始まり妊娠や出産の話も必要でしょう。

親や医師は、子どもの成長や年齢に応じて適宜説明していくことが大切です。

 

小児外来に大人がいる?

この研究報告の対象者は小児外来に通院中の患者です。

年齢は15~38歳と幅広く内訳は

 15~18歳  17名

 19歳以上  18名

となっています。

38歳で小児外来に通っているという現状は見逃せません。

移行医療かいかに進んでいないのかという表れだと思います。

そして、19歳以上の18名のうち7名は親の付き添いがあります。

対象者の心機能はNYHA分類Ⅰ~Ⅱと比較的軽度と言われるレベルです。

日常生活に大きな制限がなくても、これだけの年齢まで親が付き添っているのが現状です。

心機能の低下がある子どもにおいては、更に親や医師の関与が強くなることが予想されます。

 

まとめ

今回の研究報告を読んで、移行期において転科の準備も受診も親が主体的に動き、子どもが取り残されている印象を受けました。

移行準備は、親と医師だけで進めるものではありません。

当事者である子どもにもしっかり説明し、意見を求めていくことも必要です。

医療体制の整備と患者の自立には、まだまだ課題が多そうです。