今回も先天性心疾患の移行期を考えます。
先天性心疾患の移行期には患者の自立が必要とお伝えしました。
自立に必要なことは、自身を理解し自己決定が出来ることです。
しかし、子供は親の保護責任下にあり最終決定は親の承諾を要します。
では、成人するまで自立はできないのでしょうか。
いえ、成人してからでは遅いのです。
以前、ACHD NIGHTという日本成人先天性心疾患学会のウェビナーで「ACHDを持って働く」という回がありました。
その中で、将来についてACHD当事者が周囲と相談したいと思う年齢は16歳というデータがありました。しかし、実際に家族と話しているのはもっと遅い時期だといいます。
16歳。
ACHDへの移行期と言われる12〜20歳のちょうど真ん中に当たります。
この時期に自己決定が必要になるのは、高校卒業後の進路でしょうか。
高等学校卒業者の学科別進路状況(令和3年3月卒)
(文部科学省)
普通科の高校に通う高校生の7割近くが大学進学の進路を選んでいます。
先天性心疾患を持つ高校生は、他の高校生に比べて仕事に制限があることも多く、高校卒業してすぐに就職という道は選びにくいかもしれません。
進学する場合、志望校決定は早い人だと高校2年生の春で、一般的には高校3年生の春〜夏休みと言われています。
高校入学してしばらくすると、志望校決定に向けて自分のやりたい事や将来を考え始めるでしょう。
自立に向けて自分と向き合う大切な時期です。
自分はどんなことがしたい?
自分はどんなことができる?
心疾患がある事で、できることは限られるかもしれません。
でも、そんな中で自分がやりたい事をやるために何が必要なのか。
どうしたらできるのか。
やってはいけないこと、注意点なども医師に相談しながら考える必要があります。
先天性心疾患を持つ子供達は、産まれた時から制限されることが多くそれが当たり前になっています。
その中で「なにができるかな」と積極的に考えられる子供もいますが、それが難しい子供もいます。
そんな時は、親や医療従事者などからその子の「できること」をしっかり伝えてあげられるといいなと思います。
「あれもだめ、これもだめ」では、何もやりたくなくなりますよね。
「これは無理だけど、これならできるからこんな風にしてみたら?」のようなポジティブな声かけができるのが理想です。
あくまで理想なので、現実は難しいかもしれません。
でも、子供の希望や想いは出来るだけ汲んであげて欲しいのです。
その子を制限するものは「心疾患」であって、親や医療者ではないのです。
16歳、高校生。
まだまだ親から見れば子供です。
でも、子供ながらに将来を考え自分の足で歩き出す準備をしています。
自立に向けて、色々なことを考え悩みます。
親としては口を出したくなりますが、まずは話を聞いてあげて欲しいと思います。
大切なことは、自己決定できる環境を作る事です。
最終的な決定はまだ親かもしれませんが、話し合って一緒に考える事でそこに自分が参加したと思えることが大切です。
高校入学という新しい節目をきっかけに、親子で将来について話し合ってみてはいかがでしょうか。
※追記
当事者のブログを拝借。
やはり高校入学はいいタイミングのようです。