yandyandy’s diary

心臓リハビリテーション指導士から、心臓を持つすべての人へ

むくみ

むくみと聞くと、飲みすぎた次の日とか、立ち仕事している夕方に顔や足がパンパンになるイメージがありませんか?むくみは、医学的には「浮腫」と呼ばれ原因は多岐に渡り、むくみ方も様々なので病態把握が難しいものです。ですが、浮腫にも必ず原因があって、それが身体の状態を教えてくれているので少しでも参考になればと思います。

 

浮腫って何?

浮腫とは、皮膚の下の皮下組織に水分が溜まった状態の事を言います。皮下組織の中、細胞と細胞の間にある「間質」という場所に水分は溜まります。人間の身体はおよそ60%が水分で、その内訳は以下の通りです。

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この間質と血液の間では絶えず水の移動が起きていて、体内の水分バランスを保っています。この水の移動は血管内圧と血漿膠質浸透圧によって生じ血管の部位によらず一定の働きをします。

用語解説血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ)
溶質(溶けているもの)は通さないけれど、溶媒(溶かしているもの、水分子)は通す—そんな膜を半透膜といいます。溶質の濃度が異なる溶液を、半透膜を隔てて隣り合わせに置くと、水分子が濃度の低いほうから高いほうに移動し、同じ濃度になろうとします。この「水を移動させる力」が、浸透圧です。

次に、溶質の濃度の異なる2つの液を血漿と組織液、半透膜を血管壁に置き換えて考えてみましょう。下図を見てください。ただ「浸透圧」といった場合に重要なのは、Na+です。しかし、Na+は血管壁を自由に通過するので、血漿と組織液のNa+濃度はほぼ同じで、血漿と組織液の間で水を移動させる力にはなりません。

では、血漿と組織液の間で濃度が異なる溶質は何でしょうか。答えは、膠質(蛋白質)です。蛋白質は分子が大きいため、Na+のように自由に血管壁を通過することができません。血漿蛋白質の濃度と組織液の蛋白質の濃度を比べると血漿のほうが大きく、この差が組織液から血漿へと水を移動させる力、すなわち血漿膠質浸透圧になります。

低蛋白血症では、血漿と組織液の蛋白濃度の差が小さくなるので、組織から血漿に移動する水分も減少し、浮腫が起きます。

    

 

浮腫(ふしゅ)に関するQ&A | 看護roo![カンゴルー] (kango-roo.com)

 

動脈、間質、静脈、リンパ管、それぞれの血管内圧とこの浸透圧の差によって水分を引き込んだり、押し出したりしているのですが、静脈の血管内圧が上がりすぎてしまうと、本来は水分を引き込むはずの静脈に水分が入れず、間質に溜まってしまい「浮腫」となるのです。ちなみに間質の水分は90%が静脈へ、10%がリンパ管に流れています。リンパの流れも大切になります。

 

浮腫の分類   

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まず、全身性か局所性か診ます。次に、圧痕テスト(pitting-test)によって圧痕の有無を確認します。

※圧痕テスト

 ①脛の前面や足の甲など浮腫が見られる部位を押します。

 ②一定の力で10秒押し、指を離します。

 

圧痕がのこる場合は主に水分が貯留している状態で、圧痕が残らない場合は甲状腺機能低下症にみられる粘液水腫のように水分に加え、ムコ多糖類やたんぱく質などの血漿成分由来のものが貯留している状態と言えます。

 

どうすればいい?

多くはマッサージや下肢挙上する事で、血液やリンパの流れが良くなり浮腫は改善します。下肢挙上の高さは5㎝程度で十分であり、高くしたからより早く治るというものでもないようです。また、浮腫が生じている皮膚はとてもデリケートになっているので締め付けのきつい衣服は避け、保湿等でケアしてあげることも大切です。しかし、前述の通り浮腫には様々な原因があります。特に心不全によって浮腫が起きている場合は、安易に下肢挙上ができません。心臓に戻る血液量が増えることで、更に心臓に負担がかかって心不全を悪化させてしまう危険があるからです。その為、利尿剤などで体液の量を減らしていく必要があります。5㎝程度の下肢挙上は健常者であれば循環動態に影響が出ないという実験データがあるので、息切れなど心不全症状がない場合、医師と相談し病院で実際下肢挙上を試してみるなど、安楽になる姿勢を探しておく事も大切だと思います。

 

まとめ

浮腫は誰にでも起こりうる病態です。しかし、原因は様々であり鑑別は難しいものです。急激に浮腫み始めた、なかなか治らない、痛みを伴う、息切れがするなど少しでも違和感を感じたら早めの受診をお勧めします。今回、調べてみてリンパの流れを良くしておく事も大切だと思いました。いつも血管ばかり気にしているので、リンパの方も少し勉強してみようと思います。